(幹事社)
でなければ、幹事社質問に移ります。リニア関係で3点伺います。
第6回リニア有識者会議は、トンネル掘削による大井川中下流域の地下水量への影響は極めて小さいと座長コメントを発表しました。中下流域の河川流量維持は重要な論点であるともかかわらず、流量が維持されるという条件をわざわざつけてまで影響は極めて小さいと結論づけた国交省のコメントのまとめ方は恣意的に感じられますが、知事のお考えをお聞かせください。
そして2問目は、知事に要請書を提出した農林水産3団体や大井川流域住民のリニア工事による水への悪影響の懸念の大きさに比べると、有識者会議委員はかなり物分かりが良すぎる印象を受け、ギャップを感じますが、知事の感想をお聞かせください。
3点目は、リニア整備に使われる3兆円の財政投融資は、新型コロナウイルス感染症が拡大した後の現在であれば、3兆円を新型コロナ治療薬開発に活用した方が、国民のために有意義であり、経済活性化にも貢献度が大きいと思われますが、知事の見解をお聞かせください。以上です。
(知事)
はい。リニア関連で、3点のご質問をいただきました。
第1点は、流量が維持されるという前提条件をわざわざつけてまで影響は極めて小さいと結論付けているということについての私の考えですが、あなたは国交省のコメントのまとめ方というふうに言われましたが、まさにこれは座長コメントと、国交省の審議官が前は座長コメントに変わって自ら読み上げられましたけれども、ここが一体であるという感を深くしております。
しかし、これはコメントはそれぞれ専門家がいらして、それぞれの感想を持ってらっしゃるわけで、すべての方のコメントを取っていいんじゃないかと思いますね。わざわざコメントを出すほどのものかと。まだ最終的な結論に至ってないわけですから。それからまた今、御質問の中にございました流量が維持されるという前提条件と言われましたけれども、これは科学的な議論の仕方ですね。Ceteris paribusという。other things being equalと。これこれすべての条件が同じとして、この条件が変わらないという条件のもとで議論をしていくということなんですね。だけど、この前提条件、すなわち流量が変わらないというのは、これは現実ではありません。単なるこれは理論的な仮定でしかないわけですね、季節によって違います。ですから、この仮定それ自体はですね、現実的でないわけですね。また考え方として、流量が一定であれば、中下流域の影響はどうかと、これを極めて軽微といっても、極めて軽微っていうのがですね、表面に出てしまって、小さいんじゃないかというふうに、前提条件が違うと、場合によっては極めて大きいというふうにも言えるわけですね。従って、そうした何となく議論を誘導するような感じがですね、見受けられるということで、あなたが言われる恣意的というような質問内容になるのではないかと思います。それを避けるためには、すべての方々のコメントを出せばいいんです。さらに言えばですね、全部オープンにすれば、わざわざまとめる必要はないわけですね。そういうふうに思います。基本的な合意事項が守られていないことが、こういう座長が、いわば国交省の役人と一体になって、議事を仕切っているのではないかというですね、疑念とか批判を生む温床になってるということで、立派な福岡先生のことですから、ぜひですね、リーダーシップを発揮していただいて、こういうコメントを出さなくて済む方法を考えていただきたいと。最初コメントを出して失敗をして、今度は、事務官がコメントをして、今度はまた、恣意的というふうにとられるようなですね、ジャーナリストから。そうしたコメントを出してるということではもう、もう3回失敗したわけですから、もうお止めになったらどうですかと。ですから、基本的にこの有識者会議が開かれている前提条件、透明性を確保するということで、もしコメントを出すということであれば、有識者全部のコメントをですね、拾って出せばいいというふうに思います。座長は別にコメントを出すべき、それが有識者会議の何といいますか、要件になっておりませんのでね。事実を知るということであります。
それから二つ目、有識者会議がかなり物分かりが良すぎる印象を受けるというのも先ほどと同じようなことですね。ですからこの国交省がどういう方向に議論を誘導していくかというようなことが、こうした物分かりの良さというふうに見えるんじゃないか。だけど、委員の先生方の中には、決して座長のまとめ方に賛同している人ばかりではありませんのでね。それから農林水産3団体と、あるいは大井川流域住民の方々、最近では昨日でしたかね、農業会議の方もお越しになられております。これ広く県民運動、さらに、今日は東京から学者が来られましたけれども、その方とお話しておりますと、東京でもですね、この件については関心を持っているということでございますので、広く国民運動、この県民運動から国民運動になる、そういう動きができてると。言い換えますと、この要請書を出すなど、国民各層の間にですね、この件について、懸念が広がっているという印象であります。ですから、委員の先生方は、物分かりがいいというふうなですね、ジャーナリストの判断を生むような、議論は慎まなくてはならないのではないかと。科学的工学的にしっかり議論していただいて、それがわかりやすくですね、国民に知られるようにしなくちゃいけないと。最終的には地元住民の理解が必要だというふうに国交大臣も意見書で述べられておりますので、そこを目的にしてですね、各委員がコメントを出せばいいと。それに応じて、国民各層も、これに関心を持っていただいて、いろんな運動を起こされることはですね、私自身は歓迎しております。関心を持っていただくと、今までは本当に静岡県だけが足を引っ張ってるかのごとき、そういう悪評がですね、立っておりました。これはほぼ払拭されつつあるというふうに思っております。
それから三つ目の財政投融資3兆円ですね。これと、新型コロナウイルスの治療薬開発に活用した方が、これは別個の話ですね、残念ながら。3兆円もう既に投融資されてるわけですね。実施されてるわけです。ただですね、リニアとコロナと関係するんではないかという、そういうお考えがあるのはですね、その通りだと思いますよ。今10万人を超えましたね。全国感染者ね。そのうち3万数千人が、東京ですね。それからあと1万人弱が、神奈川県とか、あと埼玉県千葉県、これ相当多いですよ。で、かつ中京圏の愛知、それから大阪、京都、兵庫と。さらに言えば、福岡県ですね。ここで7、8割いってるんじゃないでしょうかね。少なくともこの3大都市圏で、7割以上いってると。これ感染ベルトですね。ですから、リニアが開通すれば、これ感染ベルトになるから、こうしたことにならないために、ワクチンなりですね、治療薬に使うべきではないかというのはもっともな立論の仕方ではあるかなと思います。私ども静岡県はですね、全国知事会を通じまして、様々な場を借りて、治療薬ワクチン開発の基金を創設されるように言ってまいりました。日本の製薬会社または研究機関は、開発能力を十分に持っておられるわけです。本庶先生などもですね、そういう中核にいらっしゃるわけですけれども、医薬品と医療機器の合計輸出金額は3兆円を超える輸入超過です。大体、医薬品が2兆円、医療機器が1兆円弱と、合計3兆円余りなんですよ。これが赤字なわけです。国庫を流出させてるわけです。従って、この医薬品・医療機器産業を育成して国産化を着実に進め、ゆくゆくはですね、輸出産業化を目指す必要があるということが考えでございまして、前回の全国知事会、先日5日の全国知事会でもこの点ははっきり申し上げた次第でございます。国内産業化を推進する研究開発、また設備投資に対する恒久的な支援制度の創設など、医薬品・医療機器産業を命を守る産業として、これをリーディング産業、主導産業として育成していくことが、国民を疫病から守る防疫、まさに国防の観点から必要であると思っております。今日の国際ニュースを見ておりますと、ドイツでワクチンの開発に成功して、場合によっては来月中、遅くても来年の1月にはですね、提供できると。またアメリカの方もですね、ワクチンの開発に成功したと。日本はそこからは1億2,000万人分ぐらいの数が提供できると、そのうち6,000万を、つまり半分くらいを日本がもらうということが報道されておりますけれども、恥ずかしいと思いませんか。開発できる能力あるんですからね。ですからそれをもっと後押ししなくちゃいけないんじゃないかというふうに思っております。そんなことで、医薬品についてはそういう考えを持っておりますが、3兆円のこの財投につきましては、これは投入された結果、名古屋までまず作って、そのあと、8年間ぐらい、体力をつけてから大阪まで持っていくと。その8年間分の、つまり3兆円分がですね、8年間分だということがわかって、それで8年間前倒しで大阪までできる。それが2045年から8年引いた2037年度にできるという、そういう大きな効果があった3兆円です。ですからこれがもう投入されていると。国民の税金(正しくは、公的資金※)ですからね。だからこれは有効に使わなねばならないと。しかしながら、感染ベルトを作るようなことは、国民の観点からすると良くないと。従って、政府としまして、国民の健康を守る、それからまた、水を守るという観点からですね、責任をもってJR東海に強く指導すると。なにしろ、国民全体の公金が3兆円もですね、使われてるわけですから。私どもの県内の当初予算は1兆2,000億円です。それの3倍弱ほどがですね、使われてるわけですから。我々としては、国民の観点から、これだけのものを投じた以上ですね。命を守るためにも、また命の水を、保障するためにもですね、政府としてはJR東海に対しまして、コロナ禍でリニアに対してはどうして挑むのかということで、ぜひ私は中間評価の委員会でもですね、設けていただきたいと強く思ってる次第であります。以上です。
※財政投融資は、財投債(国債)の発行などにより調達した資金を財源とした、民間では対応困難な長期・固定・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための国の投融資活動であり、税負担によらないが公的資金といえる。
(幹事社)
幹事社質問に関連して質問ある社はお願いします。
(記者)
リニア関連なんですけれども、先月、10月30日に利水関係者が訴訟を起こしまして、人格権としての平穏生活権を保持したいんだっていう主張で、工事の差し止めを求める、静岡で初めての提訴になると思うんですけれども、司法判断がどうなっていくかっていうのはまだ先だと思いますが、知事はこうした動きをどういうふうにご覧なってますか。
(知事)
当然のことだと思っております。この不安、これを解消しなきゃならないと。本当に大丈夫なのかと。利水関係者、実際、直接利害を持ってらっしゃる利水関係者だけでなくてですね、農業、それから水産業、林業、これらの県全体の代表者たちも、これはもう水を守るようにということを訴えられてるわけです。これをしかし今回は訴訟という形でですね、司法の判断を仰ぐということになったというのは淵源を、これの原因をさかのぼっていけば、要するにJR東海の資料も不十分しか出さないと、環境影響評価でそれで終わっているだろうという非常に傲慢な態度でですね。そして資料なども今回有識者会議で要求しなければ出てこないという、こうした状況で実は資料が十分に開示されてないということも明らかになったということで、こうした事態を受けますと、訴訟に踏み切らざるを得なかったのではないかということでですね、しっかり頑張ってほしいというふうにですね、一歩も引くなと。もうそのつもりでやってくださいと。なぜかっていうと、ご自身だけではなくて、子々孫々に影響を与える重要な問題について問題提起をされてるということですから。そういう思いでございます。
(記者)
第6回有識者会議の件で先ほど知事がおっしゃっていたことが、ちょっと私が把握している事実と違ってびっくりしたんですけれども、座長コメントがですね、有識者会議の参加してる委員全てが納得尽くで出したっていうふうに国交省からは説明があったんですが、それに反するというか、そういう意見を持っていない方がいらっしゃるというご趣旨の発言があったと思うんですけども、そちらは何か具体的な懸念を示されてるのは知事の耳に入ってるんでしょうか。
(知事)
そうですね。前提条件が認められれば、影響は軽微であるという、それがコメントですよね、座長の。だけどその前提条件が、本当に流量が常に一定というのが現実かというと、そうでないってことを知ってらっしゃる先生がいらっしゃいますから。従って、そういう形でコメントを出せばですね、何か中下流域には影響がないかのごとくに取るではありませんか。その前提条件というものに対して、それが言ってみれば理論的な一つの枠組みでしかないにもかかわらずですね、影響がないってことだけが、結論として出てきますのでね。それに疑問を持ってらっしゃるということを私は報告を受けております。
(記者)
リニアの有識者会議についてお伺いしたいんですけど、これまでやってきた全6回会議の進展具合やこれまでのJR東海のその有識者会議に先ほどおっしゃっていた臨む姿勢であったり、今後どれくらいかかるのか、知事の所感を教えてください。
(知事)
全部で47項目を全部議論するというのが、5つの合意項目の中の1つであります。目下のところは流量だけやってるわけですね。それ以外にも水質の問題があると、生態系の問題があると、残土置き場の問題がある等々、大きな範ちゅうだけでも5つ6つございます。そうしたことについては、専門家もまだ入ってらっしゃらないという状況ですから、これは今しばらくは続くであろうなというふうに思っております。そうした中で、一番私どもが憂慮したのは、300メートル余りですね、水位が低下すると、上流部において。これは南アルプスの山頂近くに生育している生態系に対して甚大な影響を及ぼすっていうことは素人でも分かりますから。ですからおそらく今、南アルプスを保存する運動などもですね、こうした事実発表に基づいて起こりつつあるように私は思っております。ですから、事実が明らかになりますと、何をするべきかがわかります。そうした中で、今は流量、つまり中下流域への影響という観点だけ言われてますけど、上流域にどういう影響があるかと、人間には影響はないかもしれないと。だけど生物に影響があると、そうするとエコパークとしての資格が問われることになります。ですから南アルプスの山頂部分のですね、景観が変わるということになりかねません。そうすると、さらに言えば、エコパーク取り消しという事態にもなりかねないと、そういうことに理論的に詰めていくとですね、南アルプスを守らなければならないという運動がですね、広がりつつあると思っておりまして。特に南アルプスのすぐ山麓にございます川根本町の鈴木町長さんなどはですね、この南アルプスの取り囲んでいる10の市町村との関係が極めて重要だということを昨日、中部地域の5市2町の会議でもですね、またこれもそうですけれども強調されておりました。もっともなことで、南アルプスを何とか守らねばならないというのは、この有識者会議において300メートル以上、水位が低下するという、そういう情報があったからではないでしょうか。これについてはまだですね、きっちり詰められているわけでありませんので、生態系への影響は、47項目の中で重要項目を占めております。しかしまだその学者はそこに1人も入ってません。その学者はどういう人ですかってことを問い合わせをしてもですね、国交省の方はお答えになりません。これはそこに入ってきますと、当然環境省の出番になります。ですからもう小泉進次郎大臣にもですね、こうした問題がはっきりしてきますと私はお目に掛かろうと小泉大臣からもぜひ会いたいというようなことをこないだウェブ会議でおっしゃってくださっているので、しかるべき事実が明らかになっていくと、環境省にも出向きまして、大臣閣下に直接ですね、拝眉に預かって、議論したいと思っております。
(知事戦略監)
よろしいでしょうか。 |